小学館クリエイティブ刊
「鉄人28号 THE NOVELS」
 表紙、口絵

【鉄人28号への考察】                        

小泉和明

 列強諸国より2等3等国扱いされていた第二次世界大戦前の日本は、列強に追いつけと富国強兵策を取り軍事大国を目指す事になった。
しかし大国のB-29等、圧倒的な科学兵器により焦土と化した終戦後の日本は、3等国扱いに戻り国内外の犯罪にも無防備になっていた。

 そんな時代背景の中、鉄人28号の世界では国内の地下で潜水艦まで繰り出してくる大密輸組織PX団、アメリカの極悪ギャング団、そしてもう一方の大国ソ連(S国)から派遣された大スパイ組織などは最新ジェット戦闘機多数で領空侵犯し超大型ロボット兵まで繰り出して葬り去られていた秘密兵器だった鉄人の研究データを手に入れようと暗躍していた。

 鉄人28号とは、戦争中日本陸軍によって秘密裏に研究されていたロボット超兵器だ。それが研究者の生き残りの一人によって終戦のどさくさの中、乗鞍岳に強力な要塞研究所を作り犯罪に利用する目的のため開発が続けられていたのだ。

 当時、リアルタイムに鉄人28号を読んでいた少年時代の自分は、この鉄人から「超モダンとリアリティ」という印象を強く受けた。

 主人公の金田正太郎少年の外車を乗廻しピストルを使い、ネクタイにブレザー短パンツという当時としては超モダンな少年。 又、少年読者が大好きな要素が意識的にまさに散りばめられていた。ロボットの設計図(26号)、ロボットの分解組み立て中の工場や要塞やアジトの見取り図(乗鞍岳、S国のアジトの島)など

 更にリアリティのある科学雑誌から飛び出てきたような新兵器群、大型ヘリコプター、垂直上昇機、漫画には出てこないようなエジェクトシートのシーン、更に潜水艦や駆逐艦など盛りだくさんだった。

 一方、鉄人28号や27号はデザインや扱い方は昭和初期の怪奇物の様なグロテスクな雰囲気を持ち、ギャングやチンピラ、フランスの探偵や怪盗紳士などのいろいろな人物達が、戦後といってもいささかSFチックな都市を中心にした舞台で繰り広げられる探偵物語だった。毎回事件は様々だったが、かなり超リアルな大スペクタルの様相を持っていた。

 大国の超兵器によって焦土と化した日本。終戦後建て直ろうとする日本には先に述べた超大国の暗躍や、犯罪者等によって脅かされる。 超兵器として生まれ犯罪の手先となるか、はたまた平和と復興の使者になれるのか、又兵器に戻っていくのかという壮絶なストーリーの中、平和を守るべく立場は違うが立ち上がった3人、戦争孤児の金田博士の子、正太郎君。警察の大塚署長。鉄人の研究の生き残りの一人、敷島博士。この3人をチンピラだった村雨けんじが助けるチームワーク。

これが「鉄人28号」のテーマであろう。


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