「モミモミ様に大苦戦!」

(制作途中)

第2夜 「モミモミ様に大苦戦!」

村にも冬が近づいてきました。
鰯雲もあまり見えなくなり、空が吸い込まれそうなほど高く青く見える。
そう言えば、冬神さまがおなか一杯に鰯雲を食べ過ぎると冬がもうすぐなのだと、 パパが言っていたのを思い出してお腹が鳴った……ぐぅ。

「メ〜ロ〜ンっ!!」
大きな柳の枝に寝そべってお腹の虫をなだめていたあたしに、キウィが下から声 をかけてきた。どうやら走ってきたらしく息を切らせて手を振っている。
「なあに?やけに元気じゃない…。」
そう力なく答え身を起こすと、早く降りてこいと言わんばかりに手招きして急か している。あたしは、しかたなくスルスルと枝を伝ってストンと飛び降りた。
「もう…どうしたのよ。」
プゥっとほっぺを膨らまして、不満げに問いかける。
キウィは、にーっと満面の笑みを浮かべてあたしの手を引っ張る。
「ちょっと、ちょっとぉ〜っ…」

「モミモミ様に会いに行くのだぁっ!」
運転席に乗り込むなり、そう言いだしたのはキウィでした。
村でも有名なモミモミの森…そこには不思議な虫や動物がたくさんいて、 モミモミ様というちょっと変わった神様が住んでいると…時計塔に住ん でいるリンゴちゃんから聞いたことがある。
「モミモミ様は、あの時計を作った偉大な発明家でもあるのだ♪」
熱っぽく語るキウィにちょっとたじろぎながら、あたしは以前にキウィが 取り損ねたお祭りの景品を頭に描いていた。(アレってそんなに凄いものだったのかしら…)
後ろの荷台では退屈そうに寝転がっているシロべぇが、ぐりんぐりんと鼻くそをほじっている…(もうっ…汚いなぁ)

キウィの話によると、あの時計は季節を自由に操る事ができるらしいのです。
ちょっと信じられなかったけど、たしかにモミモミの森には春にしか咲かない日だまり草、 夏にしか見ることが出来ないパタパタ鳥、秋にしか釣れない龍巻魚、冬にしか採れないワタワタなどが 時々季節はずれに手に入ったと聞くことがあるし…(だったらあんなことやこんなことが出来るかも!)
「メロンー、何ヨダレなんか垂らしてるのだぁ?」
ついつい美味しい想像をふくらませていたあたしの顔を、キウィが呆れ顔でのぞき込んでいます。
「や、やぁねぇ〜…何でもないわよっ。それはそうと早速モミモミ様に、その時計の作り方を教えてもらいに行きましょ!」
ヨダレを拭い後ろに目をやると、シロべぇが美味しい話を感じ取ったのか目を輝かせながら同じくヨダレを流している…。
「はぁ〜…こういう所だけは敏感なのね…あんたはっ。」
と言いつつ、シロべぇと同程度の想像をしている自分が少し情けなくなりました。

モミモミの森に入ってみると周りは鬱蒼としたジャングルのようで、ほとんど今来た道も分からなくなってしまいました。
すると頭の上の方から声が聞こえてきました。
「君達、ここはわしの土地だよ。勝手に入って来てもらっては困るね。」
メロンちゃんが声がする方に振り向き見上げると、そこには奇妙な鳥のような姿をした生き物がいて、こちらを見ていました。
背格好は大きなカラス程ですが、背中に大きな輪っかを背負い、手には杖を握っていました。
「あなたがモミモミ様?」
「いかにも。わしがここの森の主、モミモミ様ね。」
「ラッキー!キウィ、よかったね。」
キウィは感激してプルプルしています。
「わしに何か用かね?」
「季節、あやつってみせてよ。」
モミモミ様の表情がこわばりました。
「君達、それが人に物を頼む態度かね?」
メロンちゃんは少し考えてから、カバンの中からキャンディーを取り出して、言いました。
「これあげるから、やってみて」
「仕方ないなー」
モミモミ様は食べ物に弱かったのでした。
モミモミ様は、背負った輪っかについている針を少し動かしました。どうやら輪っかは時計のようです。
すると、もう晩秋だというのに木の根元から草が生えて来て花が咲きました。
キウィはびっくりしてプルプルしています。
「満足したかね?」
「実は…私達、その時計が欲しいのよ。作り方教えてもらえるかしら?」
「わしは季節を司る神だけど…君も神かね?」
あたしは首を横に振りました。
「では教えるわけにはいかんな!」
あたしはがっかりしてうつむきました。
足下ではさっき咲いた花が冷たい風に吹かれて震えていました。
きっと一日も経てば枯れてしまうでしょう。
あたしは悟りました。自分のわがままが原因で一つの生命の火を消そうとしていることに…。
あたしは泣き出しました。
「キウィ、シロべぇ、帰ろう…」
「ちょっと待った!!」
モミモミ様はあたし達を呼び止めました。
「これを持って行きなさい。」
そう言って、手に何かを渡されました。
それは良く出来たモミモミ時計のレプリカでした。 あたし達は何度もお礼を言ってから帰りました。

第3夜につづく…


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