見たことも無いような変な形の航空機がたくさん登場しますよ。
すぐ下に見える飛行機なんて、まるでロケットにプロペラがついてるみたい…。

●シリーズ/現代航空機
メカのルーツを探る(5)

VERTICAL TAKE OFF
and LANDING
VTOL機

小泉和明
小島和繁
文/八巻芳弘
日本出版社刊「コンバット・コミック」1986年9月号に掲載された原稿をWEB上で再現したものです。東西冷戦時代の原稿なので配備状況など現在と異なる記述も含まれています。2002年4月現在、一部加筆修正しています。

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 一般にVTOL、或いはV / STOLと呼ばれるものは、Vertical / Short Take Off and Landingの略で、垂直/短距離離着陸機のことを指す。それぞれ、ブイトール或いはエストール(ストールは失速のことなので具合が悪い)と発音する。VTOL機は、文字どうり垂直に離着陸するので滑走路が要らないわけだから、こういう飛行機が実用化できれば、特に戦争の時には長大な滑走路を敵に狙われる心配も無いし、敵に不意打ちを喰らわせることが出来る。ヘリコプターもVTOL機の一種なのだが、離陸した後で姿勢を変えて普通の飛行機と同じ様に飛行できないという意味で、ここでは触れないことにする。
 垂直離着陸と口で言うのは簡単だが、現在世界中を見回しても実用VTOL機は、イギリスのハリアーとソ連(現ロシア)のYak-38フォージャーの2種類しかないのを見ても、その困難さが分かろうというものだ。難しさの第一は、普通の飛行機ならば滑走によって得た翼の揚力で空中に浮き上がれるのに、VTOL機は翼の揚力に依らず自力で地球の引力に逆らわねばならず、その力を発揮できる程度に十分強力なエンジンを積む必要がある。そういうエンジンは一般に重いものである。第二にパイロットの姿勢の問題がある。離陸後は普通の飛行機のように飛ぶのだから、離着陸時には座席は空に向かっていることになる。座席の姿勢を変更できるような装置を付ければいいじゃないかと思うかも知れないが、そんな重量の増加を許すほどにパワーは強くない。パイロットは、寝た姿勢のままで離着陸の操作をしなければならず、こんな恐いことは無いに違いない。第三の問題点は、VTOL機の用兵上のことだ。垂直離陸の為には重量を出来るだけ減らさねばいけないから、爆弾を積んで爆撃機として使う訳にはいかない。いきおい、その用途は戦闘機か偵察機に限られてしまう。超音速の時代に入って、スピードも遅く滞空時間も短い戦闘機や偵察機など、役に立たないのは明らかだ。強力なエンジンと発想の転換が待たれていた。

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