「夏祭りのあとに…」

第1夜「夏祭りのあとに…」

今日はお祭り最後の日、夏休みも残り少ないこともあって
お父さん達には夜の花火が上がる頃には戻ると言い、 夜店を回りながら幼なじみのキウィ、居候のシロべぇと一緒に遠出をする相談をしたの♪
それがこんな事になるとは、みんなあの時は思っても見なかった…。

きのう相談したとおり、二人はお昼ご飯を食べた後あたしの家の裏の林で待ち合わせました。 早速、村でも有名な発明家、キウィのお父さんが作った「フロッギー」に乗り込み、 運転手のキウィに掛け声をかける。
「じゃあ、しゅっぱ〜つっ!」
もともと二人乗りの車なので、シロべぇは屋根の上に大きな風呂敷を担いでちょこんと乗って いる。(本人は石川五右衛門にでもなったつもりでいるようだけど、ほとんど見た目は夜逃げ のカウボーイね。)どうやら荷物はほとんどお弁当のよう…あんなに持っていってどうするの かしら?
兎にも角にも親に内緒で出かけるなんて初めてのことなので、みんなウキウキわくわく♪

しばらくフロッギーのフワフワした乗り心地を楽しんだ後、祭りの後かたづけをしている村の 人達が見えてきた。皆こちらに笑顔で手を振ってくれている。
「モミモミ時計…もう少しで取れたのだぁ…」
手を振り返しながら横のキウィが少し寂しそうに呟く。どうやら夜店で射的の景品を取り損ね たらしい。うなだれるキウィの肩をポンとたたき、
「来年またチャレンジすればいいじゃない♪」
そう言い、神社近くの小川に寄っていこうと横に折れる緩やかな下り坂を指さす。 小川に到着して、ふと屋根の上を見るとシロべぇがいない!
「またどこかで拾い食いでもしているんじゃ…」
辺りをきょろきょろと見回すと…案の定、お地蔵様に供えてある紅白まんじゅうを見つけ、口 いっぱいに頬張っているシロべぇがいた。あたし達の視線に気づいたのか、自分のモノ!と言 わんばかりに残っているおまんじゅうを後ろ手に隠している。
「誰も取ったりしないわよ…罰が当たっても知らないからっ」
ため息混じりに肩を落とすあたしと一緒にポリポリと頬を掻くキウィ。
「もう!行くわよっ」
と口の周りにあんこをべったりと付けた居候に言い放ち、小川に目を移すと昨日までの名残が 散らばっている彼方此方から、まるでゼリービーンズの様な生き物(?)が草むらを這い回っ ているじゃない!
「わぁ♪何アレっ!?」
運転席から身を乗り出し目を輝かせるキウィとあたしは、早速ムシとり網で捕まえようとフロ ッギーから飛び出した!それに気づいた臆病なシロべぇは、後ろで怖々と口の周りのあんこを 拭っている。

…そんなあたし達を川の中から見上げる顔が一つ、大きな口を開けていました。
もしかして、これはお地蔵様の罰が当たったのかしら…
「シロべぇの…バカ…。」
顔面蒼白になりながらそう呟いた瞬間バクン!と口が閉じ、あっと言う間にフロッギーもろと も、あたしとキウィは呑み込まれてしまいました。

薄れゆく視界の中に、必死で逃げてゆくシロべぇの後ろ姿が見えたのは言う間でもない事でした。 (あいつったらホントにもう…許さないからっ)

第2夜につづく…


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